胸キュン、はじめました。
「……痛い」


私は思わず胸をぎゅっと抑えた。


昨日、入江くんが私の名前を呼んだ時。私の名前を呼びながら抱きしめてくれた時。

私の(ここ)は、キュッと甘く軋んだ。

なのに今は痛い。

同じようにキュッと軋んでいるはずなのに、違った痛みを感じる。


「澪ちゃん、ごめんね。まさかファーストキスだとは思ってなかったから」


松本先輩が私に近づきながらそんな言葉を投げかけた。

入江くんはどんどん私の元から離れて、距離が開いていくのに、松本先輩と私の距離はどんどん近づいていく。


「あいつのことなんてほっといて、俺が澪ちゃんのそのときめきとやらのお手伝いするよ」


松本先輩は私を背後から抱きしめた。

だけど私の胸の痛みは消えない。


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