胸キュン、はじめました。
「今までにこの人カッコいいなあ〜! とかも思った事ないの?」

「あっ、そのくだりはもう中学でやってるから」


私は思わず手で理衣ちゃんの口を制した。そんな私の手を両の手で掴んでからヒョイっと避けるみたいに顔を突き出す理衣ちゃんは、やっぱり可愛いと思う。


「どういう事?」

「中学の時にもこの話題になった事があるんだよね」

「まぁ、そりゃ恋バナとかすると自ずとそうなるよね」


それで? と首を小動物のように傾けながら、話の続きを促す理衣ちゃんには、私とは別の生き物のような気がした。


「カッコいいなっていうのは誰にでも思うものじゃない?」

「うん? 例えば?」

「そうだな……例えば運動が出来ればカッコいい。頭が良ければカッコいい。見てくれが良ければカッコいい。誰でも一つは持ってる要素だと思うのよ」


そう、それって誰もが一つは持ってる輝けるもの。


「うーん、なんか違う気がするなぁ〜」


リイちゃんはパーマがかった長い髪を指先でクルクルと遊びながら、アヒルのように唇を尖らせた。


「じゃあ例えばだけど、芸能人では誰が好き?」

「えー、テレビあまり見ないからわかん無いなぁ」

「歌手とか雑誌のモデルとかでも良いよ。誰か一人くらいいるでしょ?」


誰か一人くらい。そうだな、強いて言うなら……。


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