胸キュン、はじめました。
「○ジョージさん」

「えー、なんでなの⁉︎ なんでそこなの?」

「自由奔放な感じがカッコ良くない?」


○ジョージさんはお茶の間のバラエティによく出演しているテレビタレント。

よく分からない、売れてるとも思えない歌を歌ったり、ゆるーい雰囲気でよくアロハシャツを着ている陽気なおじさん。


リイちゃんが崩れるようにして机に寝そべったのを見て、私そんなに変な事言ったかな?なんて、首を傾げた。


「うーん、なんか澪ちゃんのカッコ良いって意味がちょっと違う気がする〜」

「そうなの?」


そうかな? 良くわかんないけど、そう言われるとそうな気がする。

確かにいつも周りの女子とは温度差があるな、とは思っていたし。


「澪ちゃんって今彼氏いないよね?」

「うん」


私は素直に頭を前に倒した。


「じゃあ過去には?」

「いたよ」


肯定したけど、頭は振らなかった。

嘘じゃない。
嘘じゃないけど、あれをいたと言っていいものなのか不明だ。


「その彼はどうだったの?」


リイちゃんに上目遣いでそう問いかけられると、逃れられないような気持ちになる。

なんていうか、背後は崖で、逃げる事は出来ないみたいな。


「うーん……普通?」


上手くかわせない私の返答に、リイちゃんは可愛らしく眉間に小さなシワを刻んだ。


「普通って?」

「可もなく、不可もなく?」


私が首を傾けると、リイちゃんの眉間はさらに深くなった。


「ちゃんとカッコいいと思ったり、ときめきとかはあった?」

「……うん?」


今度は私が眉間にシワを寄せた。


「澪ちゃ〜ん」


私の様子を見て、リイちゃんは再び机に突っ伏した。


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