胸キュン、はじめました。
「じゃあさ、ときめくってどんな感じ?」

「そんなの決まってるでしょ。その人を見てるだけで胸の奥がギュッと締め付けられるような気になったり」

「ふんふん、それで?」

「ご飯が喉を通らなくなったり」

「それから?」

「その人に触れるとドキドキと心臓が……って、澪ちゃん」


私はリイちゃんに食い入るようにして話を聞いていたが、リイちゃんは突然目を覚ましたかのようにイスに背を預けて私と距離を取った。


「前付き合った人の事、好きじゃなかったんでしょ?」

「んー?」

「あっ、目逸らした! やっぱり〜!」


リイちゃんってば鋭いよね。


「いいな、とは思ったよ?」

「疑問形? さては澪ちゃん、告白されて付き合った口でしょ〜?」


私は返事の代わりに首を縦に振った。

するとリイちゃんは大きなため息をついて、小さな肩を落とした。


「良い人だったよ」

「じゃあなんで別れたの?」

「……フラれたの」


なんでこんなに尋問みたいになってるんだろう。


「その時、澪ちゃんどー思ったの?」

「どうって?」


私は遠い記憶を呼び起こした。あれはもう二年も前の話になる。

中学3年の冬、向こうに告白されて、向こうが私をフった。


「ショックだった?」

「そりゃあ……まぁ……」

「良い人だったから?」

「うん……」


今度は誘導尋問みたいになってきた。


< 5 / 176 >

この作品をシェア

pagetop