胸キュン、はじめました。
私の脳内ではてなマークが飛び交う中、先輩たちと入江くんは怖い剣幕で睨み合っている。


……えっと、ここはひとまず。


「ありがとうございました。私たちはとりあえず用事があるので帰ります。お代ももちろん自分たちで払いますので、さようなら」


ぺこりと頭を下げた後、入江くんの腕とテーブルに丸めて置かれていた伝票を持ってレジへと向かった。


「先輩たちは楽しくご飯食べてください。失礼しました」


そう言って、松本先輩が何か言おうとしていたのをさらに封じ込めた。


「あのー、入江くんって思ってたよりも短気なんだね?」


お会計を済ませて店を出た後、私はそんな疑問をまっすぐ入江くんに吐き出した。


「だってあいつチャラいだろ。ああいうやつ、俺好きじゃねーんだよ」


松本先輩ってチャラいんだ? ナンパして来たんだからチャラいのか。

いやでもあれはそもそもナンパだったのかなぁ?

さっき知り合ったばかりの手を握って来た変な女がファミレスにいたら話しかけてくれたんだから、むしろ心が広いのでは?

私だったら話しかけたりしないで横目に見てるだけだったと思うし。

松本先輩のお友達も先輩の事をチャラいから気をつけてって言ってたけど、あれはむしろジョークだと思ってたんだけどな。


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