胸キュン、はじめました。
「澪ちゃん!」

「はい!」


いつのまにかリイちゃんは立ち上がって、私を見下ろしていた。

ふわふわとしたリイちゃんの表情は変わらないのに、その瞳はどこか険しく思えた。

真ん丸な瞳をしてるのにそう思えるのは、どこからともなく湧き出ているこの威圧感のせいかもしれない。


「良い人、良い人……だけどそれはどうでもいい人なの」

「……うん?」


格言?


「世の中には良い人なんてたくさんいるの。だからね、それは恋じゃないよ」

「そう、ですか……」


思わず敬語が出てしまった。

そんな威圧感に、私はポケットに入ってた飴を差し出した。


「飴あげるから落ち着いて?」


そういうと、リイちゃんは不満げだけど、飴を受け取って再びイスに座ってくれた。

リイちゃんは単純なところがまた可愛いと思う。


「澪ちゃんはあれだね。まずは好きとは何かってところから入らなきゃいけないのかも」


飴の包み紙を開けて、小さな口の中にそれは飲み込まれた。


「助っ人を呼びましょう」

「助っ人?」


私の問いに答える間も無く、リイちゃんは机の上に置いていたスマホを取り、何やら文字を打ち出した。


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