胸キュン、はじめました。
「入江くんの好きな食べ物ってなに?」

「なんだよ急に」

「なんとなく?」


少し頭を捻って考えてみたけど、これと言って理由が見つからなくて私は首を傾げながらそう言った。


「……だから、それすんのやめろって」


繋いだ手の力がさらに加わった。と、同時に、入江くんはどこか怒っている様子だ。


でも、なんで?


私がさらに頭を捻りながら、考えあぐねいている様子を見てか、入江くんは「はぁー……」と深いため息をひとつついた。


「なんだよ、今度は無意識だったのかよ……」

「何が?」


私は再び入江くんに顔を向けると、入江くんの顔が突然近づいてきた。


「あたっ!」


それは突然で、さらに言えば特急並みの速さだった。


「な、なんで頭突き?!」


ゴツンッて音が聞こえた。入江くんって案外石頭だ。


「俺に上目遣いした罰」

「えっ?」


そうだっけ? そんなつもりはさらさらなかったのだけれど……。


「するつもりなかったんだろーけど、実際やったわけだから罰な。次からも頭突きが来ると思って気をつけるんだな」


えー……。

なんとなく納得がいかないけど、私はただ開いた方の手で頭突きをくらったおでこをそっと撫でた。


こぶ、出来てなければいいけど……意外と入江くんは凶暴なんだ。


< 60 / 176 >

この作品をシェア

pagetop