王子様と私。
貴方は王子様
ここは私立柿沢学園高等部、2-Aの教室。
この学園の王子様である、結城柳弥に群がる女子たちを遠目に見ながら、幼馴染みで親友の叶綾乃.Kanai Ayano.とお弁当を食べている。

そんな私は吉沢七海。平々凡々な高校生活を送っている。だから王子様が私の元に来るなんて無いわけで…


「吉沢さん?僕と一緒にご飯食べよ?」


だからこんな人の多い場所でお昼を誘うということは、取り巻きの女の子たちの標的になるのも無理はない。

「結城く〜ん、そんな女誘わなくても私らいるじゃ〜ん」
「そうだよ〜結城くんと並んだらこの子、可哀想だよ〜」

わざと私に聞こえるように文句を言う取り巻きたち。
私の外見が残念なのは私が1番分かってる。化粧だってしてないし、髪も染めてない。美人には程遠い外見なのは分かってるから、わざわざ口に出して言わないでほしい…

「ちょっと柳弥、七海は今私とお昼を食べてるの!あっち行って!」

「えー」

「えー、じゃない。あんたがいると静かに食べられないのよ!」

「ちぇー…分かったよ。またね、吉沢さん」

取り巻きから私への文句が消えない…綾乃は美人さんだから取り巻きにも文句は言われない。

「叶さんに庇ってもらうとか何様のつもりなんだよ」
「不釣り合いなの分かってるのかしら」
「ブス」

小学生の頃も綾乃と一緒にいたおかげでいじめは絶えず行われた。

トイレに入れば鍵を接着剤で固定されて出られない、上から水が降ってくる。
ペアを作れ、となると必ず先生と組むように仕向けられたし、男の先生だった時は体を触られたりした。
階段から突き落とされることもあった。

私の居場所は家にいる時と綾乃の家と保健室だけだった。

保健室の先生は私が保健室を訪れると、何も言わず控え室を貸してくれた。持って来ていた着替えに着替える為に。
そして他愛のない会話を2人で何度もした。
その保健室の先生は、王子の1番上のお兄さん。今もこの学園の先生で、高等部の保険医さん。

そんないじめも、高等部に上がれば少なくなった。シカトと陰口は相変わらずだけど。

「ごめん、七海…」

「何で綾乃が謝るの?」

「七海だけが辛い思いして…柳弥にも同じ思いさせてやりたい…」

「綾乃」

「…七海」

「私ね?綾乃と一緒にいるのが1番楽しいの。綾乃はそんな私の楽しみを奪っちゃうの?」

「っ、ごめん…」

「いいの。今更陰口ぐらいでへこたれる程メンタル弱くないからね」

「七海は強いね」

「そうかな…私には綾乃とあいつがいたから…強くなれたと思うよ」

私にとって幼馴染みのみんなは心の支えだった。みんなと会う度、いじめの事は忘れられた。

「ほら綾乃、お弁当食べる時間なくなるよ?」

「あ、うん!」

あ、そろそろ前髪切りに行こうかな…眼鏡の度も合わなくなってきたし、眼科も行かないとなー…あいつついて来てくれるかな?
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