二頭(二人の男)追うもの…バチが当たる
私達は車を降りるとバーに向かった。そして、いつものカウンター席に座った。バーテンの作ってくれた水割りに口をつけ、何か話さなくては、と、思っていると、槇さんが、自分のグラスを見つめ静かに話し出した。
「もう無理だと思ってたんです。まさか見つかるとは… この歳になって」
え?
「正直参ってます。この歳になって恋するとは…それもこんなに若くて綺麗な人」
嘘…
思いもしなかった槇さんの言葉に、驚いき槇さんへ視線を移せば、ちょっと困った様に笑う彼がいた。
「私にも残ってたんですね…こんな気持ちが…年甲斐もなく色々考えを巡らせましたよこの1週間。本当に仕事も手につかなくて…貴女を諦めたくないと思いました。もう止められないんです。この気持ちだけは…」
槇さん…
「分かりますか貴女に?あの日目を覚ました時、隣にある筈の貴女の姿が無くて、どんなにショックだったか…」
どうしよう…
「……槇さん、わたし…」
「こんなオジサンでは駄目ですか?」
槇さんの歳は知らない。歳上だとは思っていたが、オジサンなんて思った事は一度も無い。
「オジサンだなんて言わないで下さい。槇さんは素敵な方です」
「では、私とお付き合いして貰えますか?」