二頭(二人の男)追うもの…バチが当たる
「三十路女のアズキ!こっち来い!」

離れた所から先輩に呼ばれ、自分のグラスを持って移動する。

「もうっ三十路三十路言わないで下さい!それからアズキじゃなくて、こまめです!」

「小さい豆でアズキだろ?」

「あたしのは、ひらがなで、こ・ま・め・です!勝手に漢字変換しないで下さい!」

「何言ってるんだ?幼稚園児じゃあるまいし、名前くらい漢字で書け!」

この人、先輩で川井伊玖磨(カワイ イクマ)32歳、既婚者。
奥さんは、大学時代から付き合っていた人で、私の親友でもある小鈴(コスズ)。5年前、あたしが失恋して落ち込んでる時に結婚しやがった。

そう、あたしはこのふたりの結婚式の前日に、付き合っていた彼の浮気が発覚し、問い詰めたら逆ギレされ、挙句に『お前とのSEXつまんない』と、告げられ振られた。そして泣き腫らした顔でふたりの結婚式に出席した。あたしはふたりにお祝いの言葉ではなく『ひとが失恋して悲しんでるのに、あんた達は幸せになるのか!?』と怨みごとを言ってやった。(勿論、彼等には全く関係ないことです。だが、その時は言わずには居られなかったのです)

小鈴はそんなあたしに『こまめには、きっと良い人見つかるから』とブーケを渡してくれた。そして先輩も『結婚出来なかったら、老後はお前も面倒見てやる!心配するな?』と慰めてくれた。

あたしにとって、この夫婦は、昔も今も大切な友人なのだ。

「文句があるなら、あたしの親に言ってくださいよ!?先輩だって、かわいい、クマのくせに!」

顔は可愛くないけど!
先輩は顔を赤くして「おまえっ切るとこ間違ってるだろ!?」と怒った。

「痛いっ痛いって!」

先輩に、米神に拳グリグリ攻撃を貰っていると

「「おいおい、あの二人またやってるぞ?ホント仲いいよな?」」と、皆んなから笑いがあがる。

おまえら笑ってないで助けろ!





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