二頭(二人の男)追うもの…バチが当たる
あたしと輝一君が付き合ってる事まで、先輩が知ってるなんて知らなかった。輝一君も先輩の事は何も言って無かった。
「ちょっとな」
「伊玖磨さん、その輝一君って何してる人?こまめ、彼の事何も知らないんだって」
小鈴は、小鉄を妊娠してからOB会には出席してない。だから、輝一君とは会った事も無い。どんな人か興味あるというより、私の為に聞いているのだろう。
そう。
あたしは彼の事は、名前と携帯の番号しか知らない。どんな仕事をして、どこに住んでるかも知らない。輝一君の事だけじゃなく、槇さんの事もなにも知らない。
「何も知らないなんて、私、こまめの事が心配。もしかして結婚詐欺とか…」
彼等が結婚詐欺という事は無いと思う。お金をどうこうという話は一度も無いし、寧ろ、一緒にいる時のお金は全て出してくれる。
だから、心配してくれる小鈴には申し訳ないけど、今はこのままで良いと思ってる。私がどちらかに決めることが出来ないのだから。
「アズキは、輝一の事、俺から聞きたいか?」
私は首を振る。
「輝一君の事が知りたいなら、自分で直接輝一君に聞きます。だから、小鈴も心配しないで?」
先輩は「だな?」っと言って小鉄を抱き上げた。小鉄はパパに抱かれ、とても嬉しいようで、キャッキャッと喜んでいる。
「でもね?相手の事を知らなきゃ、どちらの方を選んでいいか決めれないでしょ?」
「どちらの方とは、どういう事だ!?」
小鈴の話に、厳しい顔をした先輩の突っ込みが入る。
先輩はサークルの後輩、皆んなを可愛がってくれる。だから、先輩に輝一君の他にも付き合ってる人がいる事は、知られたくなかった。