二頭(二人の男)追うもの…バチが当たる

楽しい時も2時間が過ぎ、お開きになる頃、先輩は「さぁ、帰るぞ」と腰を上げる。すると皆からは「えー」と、先輩に非難の声が上がる。先輩は昔から誰隔て無く可愛がってくれるから、今も慕うひとが多い。だから、こうして集まると、なかなか帰して貰えないのだ。

そんな中、私が助け舟を出すのだ。

「おー帰れ帰れ!妻子持ちはつまらん!とっとと二次会の金置いて、愛する妻の元へ帰れ!」と言ってやる。

小鈴は今、ふたり目を宿している。だから先輩は早く帰って、2歳になる小鉄君をお風呂に入れて、寝かし付けてやりたいのだ。

先輩は仕方ないなと言って、財布から諭吉さんを1枚出してくれる。

私は「先輩せこいっす!」と言って、もう1枚寄こせと手をヒラヒラさせる。

「どっちがせこいんだ!俺は安月給のサラリーマンだぞ!?」と言いながらも、諭吉さんをもう1枚出し、長財布で私の頭を叩く。

何が安月給のサラリーマンだ?

極一部のひとしか知らないが、この人は某自動車メーカーの御曹司様なのだ。

「さぁ!先輩の事は放っといて、皆んな二次会行こう!」

「アズキ、飲み過ぎるなよ!」

先輩の心配して掛けてくれる声に、後ろ手に手を振って、皆んなを引き連れて二次会へと向かった。





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