二頭(二人の男)追うもの…バチが当たる

流石、日曜日だ

家族連れや若い恋人達、そして仲の良い友達と楽しもうとする人達で遊園地は溢れかえっている。メインゲート前ではキャラクター達が出迎えてくれて、お客さん達は、一緒に写真を撮ろうと列を作ってる。

「こまめちゃん、僕達も行きましょう?」

「えっ写真?私は良いよ…」

昔から写真嫌い。子供の頃からカメラを向けられると、緊張して顔が強張ってしまう。だから写真の私は無表情で写ったものばかり。

断ってみたが、輝一君は私の手を引き、メインキャラクターの列に並ぶ。20分くらい並びやっと順番が回って来た。輝一君は自分のスマホをスタッフさんに渡す。キャラクターと輝一君に挟まれる様に並ぶと、スタッフさんの合図が掛かる。

「では、撮りまーす。う〜ん…オネェさん、かたいですよ?笑顔、笑顔下さい」と、満面の笑顔を向ける女性スタッフさん。

笑顔下さいって言われても
「はいどうぞ!」って
そんな簡単にはあげれませんよ!?
あなたとは初対面ですし
このキャラクターの中も
男性か女性か分からない
もしかしたら
キモいオジサンかも分からないのに

「はいっチーズ!」

えっ!?

スタッフの掛け声と同時に、キャラクターと輝一君から頬にキスされた。

思いもしなかった出来事にあたしは「キャッ!」と声をあげた。

キャラクターからのキスは、他の人達の撮すのを見ていて想定していた。でも、輝一君からもキスされるとは思わなかった。

「こまめちゃん、可愛い」

輝一君のスマホの画面には、キャラクターと、あたしに笑顔でキスする輝一君、そしてなんとも情けない顔をしたあたしが写ってる。

「お願い、消去して!」

「いやです!こんなに可愛いこまめちゃんなんだから、いいじゃないですか?それに、僕皆んなに見せて自慢するんですから」

皆んなって…誰?
自慢出来るような写真じゃないよ?

「…消去は諦めるから… せめて誰にも見せないで?お願い」

「考えておきます」

「………」






< 7 / 48 >

この作品をシェア

pagetop