楕円の恋。
私は手洗い場で上機嫌で鼻歌交じりに洗い物していた。

明日は休み。休み。

早く帰りたくて仕方がなかった。

『お疲れ〜。ご機嫌だね。なんかいい事あった?』

全く気配を感じなかったのでビクッてなった。

後ろに智美さんが両手にウォーターボトルを持って立っていた。

『と、智美さんお疲れ様です。今日早いですね』

『明日試合だからね。みんな軽めの調整で今はミーティングしてるよ』

『明日頑張ってくださいね。応援してます』

『うん。ありがと』

智美さんが私の隣でウォーターボトルを洗い始めた。

『で、ご機嫌だけど?何かあった?』

智美さんが笑顔で聞いてきた。

『たいしたことじゃないですけど、明日オフになって嬉しくて。でも次の日1日練習なんですよ』

『そ、そうなんだ。』

智美さんの表情が少し曇った気がした。

『それより、智美さん彼氏誰なんですかー??教えて下さいよ〜』

『う〜ん。内緒。』

智美さんが微笑む。

『ケチ〜。でも順調なんですか?』

『まぁね〜。私も好きになってきたから』

『うわ〜のろけだ!いいなぁ!』

幸せそうな智美さんの笑顔を見て私も幸せな気分になった。

『影山君は明日スタメンなんですか?』

『晴人?晴人は明日10番だよ。何何?気になってるの?』

『いえ、ただのクラスメイトです』

私は全力で否定した。

『ふふふ。強がっちゃって。晴人かっこいいもんね。ライバル多いけど頑張れ。私応援するから。』

『もう、本当にそんなんじゃないんです!』

私は改めて否定した。

『智美さーん。集合かかってます!』

ラグビー部の一年生が智美さんを呼びに来た。

『すぐ行く〜!涼ちゃん。ファイトだよっ!』

智美さんは両手でガッツポーズをして、走って行った。

もう。本当にそんなんじゃないのにー。

私は残りの洗い物を片付けて部室へと戻った。
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