イノセントダーティー
大学に入ってすぐ、高校から一緒のイクトに誘われサークルに入った。『アクティブで健全な学生生活を送るため年間を通しスポーツで交流するサークル』だと説明されたけどそれは学内でスムーズに事を運ぶための建前ってやつで、実質は飲んだり遊んだりするためのいわゆる飲みサーというやつだった。
サークルに入った翌日、駅前の居酒屋で新入生のための新歓コンパが行われた。遠方から来ている人は参加を断っていたけど、大学進学が確定してすぐ駅前のアパートで一人暮らしを決めていた俺とイクトは迷わず参加した。帰りの電車の心配をしなくていいのは本当に助かる。
急に大人になれた気がした。先月まで高校の制服を着て深夜には眠りにつくのが当たり前の生活を送っていたのに。
漠然と、大学生になったら新しい自分になれるんじゃないかという希望があった。サークル活動は有意義な大学生活を送るために必須だとイクトは力説していた。俺もそれに乗った。単純に大学での新しい友達がほしかったし、入学式で高校とは違う顔ぶれを見てワクワクした。
現役合格できたので俺もイクトも18なのだけど、居酒屋で席に着くなりサークルの先輩達は否応なしにお酒を勧めてきた。もちろんお酒なんて今まで一度も飲んだことがない。ついこの間まで受験生だったのだから当然だ。
「二杯目からはウーロン茶飲んでていいから、一杯だけ付き合ってよ〜。な?」
アルコールを強引に勧めるのってパワハラじゃなかったっけ? ニュースか何かで見た情報が頭に浮かんだものの、口にはしなかった。飲酒に抵抗があるのはたしかだけど、賑やかに騒ぐ先輩達の姿を見ていたら俺もそれに混ざりたくなった。
「じゃあ、一杯だけ」