イノセントダーティー


 先輩達と適当に別れ、近所の別のアパートに住むイクトとも彼の自宅のそばでバイバイした。

 家に帰ると急に喉が渇いてきた。さすがに飲酒初心者のクセに調子に乗って飲みすぎたのかもしれない。冷蔵庫を開けたけど、引っ越し直後で何もなかったのだと気付きうなだれる。仕方ない。コンビニまで行くことにした。

 夜も深い。終電も終わった頃か。普通だったら面倒なはずなのに、夜中にコンビニへ行くという行動すら楽しかった。まだアルコールで酔っているのか、人気がほとんどないのをいいことにスキップまでしてしまった。誰かに見られたら完全に変な奴だ。

 こんな風に夜中に外へ出るなんて初めてだ。今こんな風にワクワクできてるなんて特別な感じがして嬉しい。夜のせいか、空気の匂いも昼間と違う。それすら気持ちを高ぶらせる材料になる。

 外気は少し冷えるけど、酔いでほてった体にはちょうどよかった。気持ちがいい。

 目的のコンビニのそばまで来て、思わず足を止める。バス停のイスに女の人の姿があったからだ。もうバスも終わっている。一人で何をしているんだろう? 誰かと待ち合わせという風にも見えない。

 いつもだったら見て見ぬふりをするのに、酔いのせいか、テンションの高さを保ったまま俺は彼女に近付いた。

「こんな夜中にどうしたんですか?」

 そんな言葉が飛び出した。俺だって大した用事もなく夜中に出歩いてるというのに。
< 4 / 16 >

この作品をシェア

pagetop