そのキスで、忘れさせて
家の扉を閉め、肩で息をしていた。
そんなあたしの身体もびしょ濡れの遥希に触れ、濡れていた。
寒さにぶるっと身震いしたあたしに、
「……で、何があったんだ?」
遥希は静かに聞く。
その言葉には嫌とは言わせない強さがあった。
遥希はなんて思うかな、キスシーンが嫌だったなんて言ったら。
呆れられるかな。
重い女と思うかな。
こうやって遥希を目の前にすると、嫌われたくないなんて思ってしまう。
さっきまで、別れようとしていたのに。