そのキスで、忘れさせて
遥希に負けないよう、頑なに口を閉ざし下を向く。
こんなあたしの顎を……くいっと持ち上げる遥希。
顔を上げると遥希の綺麗が間近にあって、不覚にもどきりとする。
そして、その綺麗な瞳から目を逸らした。
「言わないと、分からねぇ」
そう言う遥希に、とうとう突っかかっていた。
「遥希には分からない!」
黙ってあたしを見る遥希。
そんな遥希にイライラさえする。
「仕事だって分かってるけど!
でも、辛いんだから」
「は?」
「あんたが優子を抱きしめたり、キスしたり……」