そのキスで、忘れさせて
男性の服なんて、誠の遺物しかなかった。
だから遥希はシャワーを浴び、バスタオルを巻いて出てきた。
そして、鍛えられたその胸板や腹筋を見てひっくり返りそうになった。
整った顔に、彫刻のような美体。
ヤバイ……
やっぱり遥希はただ者じゃない。
あたしは敢えて見ないようにして、遥希に言う。
「誠ので良かったら、あるけど……」
すると、
「ふざけんな」
遥希節が炸裂する。
その言葉は、下を向いたままのあたしにふりかかる。