そのキスで、忘れさせて
「遥希はみんなに必要とされているから……続けてほしい」
ここで泣きつくことも出来たのに。
なのに、結局はいい女を演じてしまう。
こんなあたしを見て、遥希はまた自虐的に笑った。
「ただ、覚えていてほしい。
言い訳がましいけど、何の感情もない。
……マジで、何の感情もない」
「うん……」
「仮に感情があったなら、あんなキスはしねぇ」
「え……」
その言葉に驚いた。
遥希は尚も真剣な顔であたしを見ていて。
どきんと大きく胸が音を立てる。