そのキスで、忘れさせて





「美咲は辛かったんだよな、俺が仕事でキスして」




念を押すように言う遥希に、何も言えなくなる。

ただあたしは、こくりと首を縦に振るのみ。

すると、遥希は泣きそうな顔で笑った。

いつもの俺様遥希とも、アイドル遥希とも違う。

もっと人間らしくて感情剥き出しで。

そんな遥希を見て、あたしも泣きそうな顔で笑っていた。






「じゃ、美咲は、俺が好きっつーことか」



「え?」



「そうだろ?

好きじゃなかったら、妬くこともねぇ」





ドキドキドキドキ……




胸が甘く疼く。

低い遥希の声が心地よい。






あたしが遥希を……好き?



まさか……



まさかね……




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