そのキスで、忘れさせて
誠を忘れるために、付き合い始めた。
だけど、キスシーンを見て、胸が酷く痛くなった。
そして、遥希の言葉を聞いて安心した。
もやもやは確かにあるけど、涙が出るほどほっとしたんだ。
あたし……
遥希が好きなのかもしれない。
「演技じゃねぇから」
遥希はそう言って、あたしの頰に触れる。
優しく、割れ物に触れるかのように。
遥希が触れた部分が焼けるように痛い。
そして、遥希の顔がゆっくり近付く。
綺麗なその顔と、ボディーソープの香りにくらくらする。
「演技じゃ、出来ねぇから」
遥希は再び静かに告げ……
あたしの唇に触れる。
すごくすごく優しく。