そのキスで、忘れさせて
再び沈黙が訪れる。
そして……
「はぁ!?ふざけんなよ」
遥希のイライラした声が聞こえる。
だいたい予想出来ていたけど、遥希はやっぱり不服のようだ。
「俺がクローゼットに隠れて見ててやるっつっただろ!」
そんな遥希に言ってやる。
「大丈夫だから。
……もう、気持ち、ないから。
それに、誠よりも遥希のほうがずっとかっこいいよ?
遥希はアイドルだし……」
「……28のおっさんに、アイドルとかうぜぇ」
遥希の声で我に返った。
あたし、何も考えていなかった。
遥希はTODAYのことを誇りに思っていると思っていた。
だけど……
今までの遥希の言動を思い返せば、なんとなく違っていた。
特にアイドルとか言うと、露骨に顔を歪ませる。
あたしはやっぱり遥希のこと、何も分かっていないんだ。