そのキスで、忘れさせて





沈黙するあたしたち。

空は既に暗くなっていて、街灯の光が辺りをぼんやり照らしていた。

風が吹いたのか、近くでカサカサと葉の揺れる音がした。

誠はまっすぐあたしを見て言う。




「それなら、待ってる」





……え?





「美咲が僕を許してくれて、僕の元に戻るまで」





何も言えなかった。

まさかの言葉が返ってきたから。

これで終わりだと思ったのに、終わりではないの?

だけど……

終わらせなきゃと思う。

あたしはもう、遥希のものだから。



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