そのキスで、忘れさせて






そして……





「きゃあーーー!!」




割れんばかりの悲鳴の中現れたのは、渉役の遥希。

冴えない会社員役なだけあって、少しよれたスーツ姿なのに……

存在感が半端なかった。

オーラっていうのだろうか、こういうの。

きらきら輝いていて、華やかで。

不覚にも、優子とお似合いだなんて思ってしまう。





「遥希ー!」




女性たちが彼を呼び、遥希は人のいいアイドルスマイルで手を振る。

見慣れた笑顔だった。

テレビの中でよく見る、素敵笑顔。

この中の誰も、遥希がどす黒い奴だってことは知らない。



< 147 / 384 >

この作品をシェア

pagetop