そのキスで、忘れさせて
そして……
「きゃあーーー!!」
割れんばかりの悲鳴の中現れたのは、渉役の遥希。
冴えない会社員役なだけあって、少しよれたスーツ姿なのに……
存在感が半端なかった。
オーラっていうのだろうか、こういうの。
きらきら輝いていて、華やかで。
不覚にも、優子とお似合いだなんて思ってしまう。
「遥希ー!」
女性たちが彼を呼び、遥希は人のいいアイドルスマイルで手を振る。
見慣れた笑顔だった。
テレビの中でよく見る、素敵笑顔。
この中の誰も、遥希がどす黒い奴だってことは知らない。