そのキスで、忘れさせて




見すぼらしい自分が恥ずかしくなって、せめて遥希にバレないようにと下を向く。

そんなあたしの努力も、水の泡となって消える。






「遥希くーーん!!」




なんと、隣にいる泉があり得ない大声で遥希を呼んだのだ。

その声に遥希が反応してしまって……

思わず顔を上げたあたしの視線と、遥希の視線がぶつかった。




見惚れていた。

煌びやかな彼に。

ただぼーっと、彼を見ていた。




だけど遥希は、何事もなかったかのようにあたしから目を逸らす。

分かっている。

あたしたちの関係は秘密だと。

だけど、こうやって知らんぷりさらるとやっぱり辛い。

胸がぎゅーっと締め付けられるようだ。


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