そのキスで、忘れさせて
「うるせぇな。
世界って何だよ、世界って」
遥希はそう言って、困ったようにあたしを見る。
あたしは馬鹿だ。
また遥希を困らせている。
でも、困らせずにはいられない。
TODAYの遥希であることを見せつけられると、心配なんだ。
「なんでここにいるの?」
遥希に聞くと、
「逃げるから、急いで追いかけたに決まってるだろ」
彼は言う。
「放っておくと、勘違いして俺から離れるから……」
遥希の言葉は、
「遥希さん」
女性らしい綺麗な声にかき消された。