そのキスで、忘れさせて





このまま逃げられると思っていた。

そして、泣き寝入りしようと思っていた。




だけど、



「ちょっと待って」



超笑顔の遥希に腕を掴まれる。

超笑顔なんだけど、その手は怒っていた。

そして、



「ごめんね。

僕、この人と話があるんだけど」



優子に言う。

優子は口をぶーっと膨らませ、



「遥希さん、いつもそっけないですね」



なんて言う。

そして、遥希の反対側の手を掴み、



「これからご飯行きましょうよ。

あたしは、遥希さんともっと話がしたいです」



遥希に擦り寄った。

そしてあたしは、そんな優子を見ることしか出来なかった。




見せつけだ。

生き地獄だ。



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