そのキスで、忘れさせて
無理矢理手を振りほどき、逃げようと思った。
不覚にも、遥希が優子とご飯に行けばいいなんて思ってしまった。
本当は、絶対嫌なのに。
もう、遥希はあたしを止めないだろう。
止められないだろう。
だって遥希は、キラキラ遥希なんだから!
だけど……
「こいつと話があるっつっただろ」
思わぬ言葉が聞こえた。
怒っている訳ではないけど、低くて荒っぽいその声にびっくりして顔を上げる。
目の前の優子は、耳を疑ったようなぽかーんとした顔を遥希に向けていた。
そんな優子を睨む遥希。
……いつもの遥希様だ。