そのキスで、忘れさせて
「待ってろ、すぐに戻るから」
そう言って消えた遥希は、本当にすぐに戻ってきた。
私服に着替えて。
今日は紺色のコートにベージュのパンツ。
シンプルだが、なかなかかっこいい。
そしてやっぱり帽子にマスクをしていた。
バレないようにしているけど、やっぱりスタイルの良さは隠せない。
わざと遥希を睨むと、遥希はあたしを見て笑った。
反則だ、こんな時に笑うなんて。
あたしはいちいちきゅんとましてしまうから。
そして、遥希は黙ってあたしの手を握った。
その手に触れるだけで、顔が真っ赤になる。
キスされると、倒れそうになる。
あたしはこの先、大丈夫なんだろうか。