そのキスで、忘れさせて
遥希はあたしをタクシーに詰め込み、彼の家に向かった。
あたしたちは何も言わず、ただ手を握って座った。
鼓動は相変わらず速い。
止まってしまうのではないかというほど。
遥希に気付かれないように、遥希を見た。
街灯やネオンに照らされる遥希は、ずっと窓の外を眺めていた。
その横顔にくらくらする。
やがてタクシーは海沿いのマンションへ停まる。
そのタワーマンションは煌びやかに輝いていて、やっぱりあたしとは住む世界が違うと嫌でも感じさせられた。
「やっと俺のものになる」
静かに遥希はあたしの手を引き、エントランスに入る。
そして、豪華なエレベーターに乗り、最上階を押した。
「誰にも邪魔させねぇ」