そのキスで、忘れさせて
「……え?」
「持ってろ」
そう言って渡されたもの。
それはひんやりと冷たくて、一瞬何か分からなかった。
だけど、そのごつごつした感触には心当たりがあって……
思わず息を飲んだ。
それは暗闇の中、微かな光を反射してきらきらと輝いている。
あたしは、
「あたしがこれを持っていてもいいの?」
思わず聞いていた。
「もし、遥希が女性を連れ込んでいても、あたしが入ってくるかもしれないんだよ?
優子も呼べないよ?」
「なんで優子なんだよ……」
遥希は心底嫌そうな顔をする。
そして、あたしを抱きしめたまま言う。