そのキスで、忘れさせて
「元彼に浮気されて、俺のことも心配してるんだろ?
……その気持ち、分かるんだよな。
だから俺は違うって分かってもらいたくて」
TODAYの遥希より、低くて落ち着いた声。
心地よくて、あたしを甘く溶かす声。
その声で言われると、なんだか信じてしまう。
安心してしまう。
「俺は確かに家にいねぇ。
明日も朝から仕事があるから、あと三時間後には家を出る」
「えぇっ……」
泣きそうになるあたし。
ぎゅっと遥希の腕にしがみつく。
そんなあたしに、
「わざとやってんのか」
ため息混じりに言う遥希。
訳が分からない。
遥希こそ、わざとやってるの?
今のあたしは、どんどん遥希から離れられなくなっている。