そのキスで、忘れさせて
この家の家賃はいくらだろう。
恐らく、あたしが思いもしない額なのだろう。
豪華なタワーマンションの最上階。
ガラス張りの室内。
広いリビングに、広いベッドルーム。
そして、広いキッチン。
白い大理石な立派なキッチンなのに、ほとんど使われた形跡がない。
冷蔵庫を開けると、ペットボトルの緑茶と缶ビールが少しあるだけ。
もしかして、遥希はまともなご飯を食べていないのかもしれない。
身体を張って働いて、あたしの元に駆けつけて……
どれだけ自分を犠牲にしているんだろう。
そして、何気なく付けた、大きなテレビ。
その画面に、あたしは見入っていた。