そのキスで、忘れさせて
余興の曲だけの予定だったのに、結局そのDVD全てを見てしまった。
TODAYに釘付けになって、遥希に狂わされて、生きた心地がしなかった。
まるで抱かれたような甘い余韻に浸ってから……
ようやく正気に戻る。
練習しなきゃ!
だけど、あのダンスは、あたしには無理があると思う。
一週間で仕上げる?
冗談じゃない。
だいいちバク転なんて出来ないし、側転さえ……
そう思って、おもむろに助走をつけて手を上げてみた。
勢いで床に手を付き……
「きゃっ!」
あたしの声と、グキッという手の関節音が広い部屋に響いた。
そして、
ドスン……
大きな音とともに身体に痛みが走った。
……無様だ。
こんな姿、遥希に見られなくて本当に良かった。