そのキスで、忘れさせて
「はぁ?側転?」
あたしの言葉を聞いて、遥希は複雑な顔をした。
本当は笑いたいのだけど、真っ赤な顔のあたしを見て笑えない、といった状況だ。
そしてあたしは、真っ赤な顔のまま遥希を見る。
あたしの前にいる遥希はいつもの遥希と何ら変わりない。
だけど、さっきまで観ていたDVDの中の煌びやかな遥希が頭から離れないのだ。
あんなにファンがたくさんいて。
歌にダンスにトークに、みんなが悲鳴を上げていて。
そんな凄い人があたしの前にいるなんて。
それに……
涼しい顔で繰り広げられた激しいパフォーマンスを思い出す。
それだけで、あたしの胸も早鐘を打つ。