そのキスで、忘れさせて
「ただのいい女かと思ったけど、ギャグもやるのか」
「……」
「能力未知数だな」
「……」
ただのいい女。
その言葉がやけに胸に沁みる。
遥希、本当にそう思ってるの?
あたしより、優子や如月ユイカのほうが、ずっといい女だ。
だけど今はそんなことを考えている余裕はない。
この状況をいかに切り抜けるべきか、必死に考えた。
遥希に言うのが恥ずかしかった。
余興でTODAYをしないといけなくなったなんて。
だんまりを決め込んだあたしの前に、急に座り込む遥希。
さっきまで大画面で見ていたその綺麗な顔に、どきんと胸が大きく鳴る。
遥希はそんなあたしなんかにお構い無しだ。
捻ったあたしの右手に優しく触れる。
それだけで、痛みなんて吹っ飛んでしまいそう。
血液が沸騰して、無敵になってしまいそう。