そのキスで、忘れさせて
「なかなか教えてくれないからなぁ」
遥希は困ったように言う。
「一人で解決して、俺から離れてく」
またそれだ。
そして遥希は、顔をしかめてあたしを見た。
その綺麗な顔が、くしゃっと歪む。
「他に隠してることないのか?」
「……っ」
思わず狼狽えるあたしを、遥希は見逃さない。
あたしの手を再び握りしめ、噛み付くように言う。
「吐けよ」
口をぎゅっと閉じるあたしに、遥希は言う。
「そんな顔すると、キスするぞ?」
「!!!?」
声にならない叫び声を上げた。
そして、座ったまま、床から飛び上がった。
鼓動は速く、顔は熱い。
そして全身を震えが駆け巡る。
遥希は意地悪だ。
あたしがその言葉に狂わされることを知っていて、わざと言っている。
「誠が……結婚式に来るみたい……」