そのキスで、忘れさせて
結局、余興も上手くいった。
……というより、完全コピーを目指していたのはあたしだけで、アクロバットはおろか、振り付けさえバラバラだったのだ。
その中で頑張ったあたしは目立ってしまい、
「本物の遥希みたいだった」
なんて言われてしまった。
この人たちは知らない、あたしが本物の遥希に教えてもらっていたことなんて。
そして……
誠はいるものの、関わる機会がなかった。
あたしが避けていたのはもちろん、余興のことで忙しくしていたら、気付いたら時間が経っていたのだ。
「誠君、本当にいいの?
こっち見てたよ」
泉があたしに言う。
「うん、彼氏出来たから」
「遥希似の彼氏ね?」
だから、遥希似ではないの!
そう言おうとしたが、またもやおしゃべりの泉に阻まれる。