そのキスで、忘れさせて
だけど……
「二人も飲みなよ」
と、並々ビールを注がれた。
飲まなければいい。
それなのに、あたしは注がれたビールを口にしていた。
……というのも、大学時代はテニス部に所属していたあたし。
当時、注がれた酒は絶対に開けないといけないという、鉄の掟があったのだ。
「空気読めない」
飲めないから人は、そう言われる恐怖からきた、お酒を飲みすぎる癖。
その癖は社会人になっても抜けなくて、お人好しと言われてまで注がれたアルコールを飲み干していた。