そのキスで、忘れさせて





「誠だったの……」




あたしは、びっくりするほど落ち着いていた。

誠はアルコールで真っ赤になった顔を歪ませて、男性たちを見る。

そして、男性たちは、



「美咲ってまさか……」



やっと気付いたようだ、その美咲があたしだということに。





側から見たら、修羅場だったに違いない。

だけどあたしの心は、もう悲鳴すらあげない。

騙されていたことは、すごく腹が立つ。

ただ、それだけだ。



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