そのキスで、忘れさせて
誠は遥希と何か話していた。
何を話しているのか分からない。
ただ、誠も声を荒げることなく頷いていた。
そして……
「申し訳ないことをした」
あたしに携帯を返してくれる。
「美咲の彼氏……悔しいけどいい人だね」
そう言ってあたしに背を向けた。
また、遥希に助けられた。
遥希がいなかったらあたし、どうなっていたんだろう。
誠が二次会会場に戻ってしばらくして、遥希が迎えに来てくれた。
「遥希!ありがとう!」
いつものように笑顔でお礼を言ったが……
遥希は無言であたしの手を引いた。