そのキスで、忘れさせて




「もっとしっかりしている女かと思った」




その言葉が心に突き刺さる。





あたし……遥希に幻滅されたんだ。

遥希を失望させたんだ。

なんでもっと深く考えなかったんだろう。






「あいつ……

きっとまだ、美咲のこと諦めてねぇよ」




うな垂れたまま頷く。

そして、声を振り絞って言った。





「ごめんなさい。

……遥希は仕事もあったのに」



「仕事が何だ。

俺はお前のほうが大切だ」




その言葉に泣きそうになる。

だけど、泣いたら遥希が動揺すると思って、必死に堪えた。





「酔っ払う女は嫌いだ。

よそ見してんじゃねぇよ」



その発言に、



「よそ見してるのは遥希でしょ?」



あたしも声を荒げていた。



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