そのキスで、忘れさせて
遥希は黙ってあたしを見た。
怒っているのか、驚いているのか分からない表情で。
「ほら、図星でしょ?」
「図星も何も……」
遥希は静かに言う。
歳は少ししか離れていないのに、遥希は驚くほど大人だ。
「あいつと別れて二年近く経つのに。
28年も生きていたら、女の一人や二人はいるだろ」
やっぱり元カノなんだ。
ズキンと胸が痛い。
「散々揉めたから、そういうことは嫌なんだよ。
だからお前には死ぬほど尽くしてる。
そういう意味では比べてるな」
ため息混じりに遥希は言った。