そのキスで、忘れさせて
「じゃあ……あたしとも……」
思わず口にしたあたしに、
「切り札はある」
遥希は静かに告げる。
「俺が結婚しても人気が落ちないと事務所が判断したら、交際が許されるかもしれねぇ」
「けっ……結婚!?」
あたしは思わず変な声をあげ、仰け反っていた。
そして後ろに手を付いたまま、がくがく震える。
結婚?
何、それ。
交際だって許されていないのに。
あたしの耳、ついに幻聴まで聞こえるようになったの?