そのキスで、忘れさせて
「はじめは、すげぇ大人の女だと思った。
偶然入ったファミレスで、お前らの修羅場を見て。
普通、浮気されたら取り乱して怒るよな。
それなのに美咲は、お幸せにって言うだけで帰っていった」
その低い声に聞き入ってしまう。
「どんな奴かな、からかってやろうと思った。
もちろん、素性なんて明かさずに。
けど、話したら……
無防備な俺は、すぐに惹かれてしまった」
遥希はその手を伸ばし、あたしの頰に触れる。
もうすでに熱くなった頰は、焼け焦がれてしまいそう。