そのキスで、忘れさせて
「俺は……いい夫、いい父親になると思わせればいいと思うんだ」
「それって、具体的にどうするの?」
遥希は困った顔をしていて。
あたしも聞いてはみたものの、いい考えが思い浮かばなかった。
苦し紛れに言う。
「いい夫役や父親役をやるとか?」
「そうだな……でも、それでは足りねぇ」
悩んでいるあたしの目に飛び込んできたもの。
それはあたしの作った豚丼だ。
「料理……」
「は?」
「料理するとかは?」
「……は?俺様に料理をしろってか?」