そのキスで、忘れさせて
遥希は気まずそうに口に手を当てる。
そんな遥希を、藤井さんは面白そうに見ている。
玄らしくない、ニヤニヤした顔で。
そして言う。
「胡散臭い世界ですよね」
遥希は藤井さんを睨む。
睨まれた藤井さんは、慌てて付け加えた。
「俺も馬鹿で変態っつーことを隠してますから」
藤井さん……玄が馬鹿で変態!?
そんなはずない!
嘘だと言って、嘘だと!!
だけど、藤井さんは訂正することはなくて、相変わらずの笑顔で遥希に言った。
「じゃ、これから俺たちは友達っつーことで」
「はぁ?」
「俺が料理の腕を磨いてやるよ、遥希ちゃん」
藤井さんはいたずらそうにそう言った。