そのキスで、忘れさせて
「藤井さん……本当に、遥希に協力してくださるんですか?」
思わず聞いていた。
だって、フランス料理店のオーナーだという藤井さんは、料理のプロだ。
そんな藤井さんが、好意で遥希の影武者のようなことをしてくれるとは思えなかった。
それなのに、
「俺で良かったら」
彼は相変わらず笑顔だ。
「ギャラ折半する?」
そう提案する遥希に、
「結婚資金にでも貯めときな」
藤井さんは興味なさそうに言った。