そのキスで、忘れさせて
遥希はこの後、明日のリハーサルをすると言っていた。
欲を言えば、リハーサルを見たかった。
遥希はあたしの前で、本気でダンスしたことなんてないし、もちろんアクロバットも見たことがない。
何より……怖かった。
遥希と離れるのが。
如月ユイカの存在が、あたしを脅かしていた。
だけど、
「明日、仕事あるだろ?」
遥希は言う。
「もう帰れ。
それに……そこで見られると、マジで緊張する」
そんなことを言われ、無理矢理スタジオを押し出された。
そして、縋るように遥希を見たが、彼は容赦なくスタジオの扉を閉めた。